25. 普通の人々

普通の人々 [DVD]

普通の人々 [DVD]

普通かそうでないか

クリスマスキャロルが聴こえるころ、ちょっとローな気分に浸りませんか(笑)。この映画は、パッヘルベルのカノンにのって、ナーバスな思春期の青年と、彼の家族を描くものです。内容紹介を、Amazonから。

内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより)
『バガー・ヴァンスの伝説』のR・レッドフォードの初監督作品にして、アカデミー賞4部門を受賞した人間ドラマ。幸せな日常を送っていた家族が、長男の事故死と次男の自殺未遂という不幸によって、次第に愛情と信頼がギクシャクした空気に変わっていく。

内容(「Oricon GE」データベースより)
愛すること、生きることの難しさを、崩壊していく家庭の中に描いたロバート・レッドフォード初監督作品。出演はドナルド・サザーランド、メリー・タイラー・ムーアほか。

一昔前の映画なので、よくない例えかとは思いつつ、『17歳のカルテ』の後の物語というとわかりやすいかもしれません。主人公の青年が、精神病院を退院した後のお話。リストカット、自殺願望、心の閉塞。決してファッションじゃなく、若者の普遍的な感情(と起因する家族や周り)をすでに描いています。「普通」にやっていくのが難しい。
17歳のカルテ コレクターズ・エディション [DVD]
本作は、『17歳のカルテ』よりずっと入り込めるし、胸にくる映画だと思います。ウィノナ・ライダーはウサンクサクなっちゃいましたね。
カッコーの巣の上で [DVD]
ちなみに、精神病院を扱った映画で『カッコーの巣の上で』にも一応リンク。こちらはさらに往年の名作ですが、ヘビーです。

名手ロバート・レッドフォード監督

ロバート・レッドフォードといえば、名優。なんでしょうけど、出演作で心に残ってるものは、実はあまり知らないんです。むしろ、ロバート・レッドフォード監督作にハズレなし! というのは毎回思うこと。いくつかリンクを。
リバー・ランズ・スルー・イット [DVD]
『リバー・ランズ・スルー・イット』。ブラッド・ピット出演。自然と人間の美しさを巧みに映像化しています。そして人間が堕落していく醜さと、一方で変わらぬままの自然の美しい様に考えさせられます。リンク先の内容紹介がとてもわかりやすいです。見た後に「いい映画見た〜」と充実できます。
クイズ・ショウ [DVD]
次に、『クイズ・ショウ』。こちらはサスペンス性もある、一大スキャンダル映画。登場人物の表情なんかにすごい緊張感あって一気に楽しめます。ちょっと地味な雰囲気ですが、実話が基なだけにリアルで面白い。こちらも、画像のリンク先の解説が丁寧でいいですね。「なんか面白い映画ないの」という人、未見であればぜひ。


この監督は、よくいわれると思いますが「人間ドラマ」の名手です。自分、そういうの好みなので特に好きというのもあります。
加えて、映画らしさ、映像的な演出をどの作品でも追及してるように思います。斬新というのでは決してないのですが、その分逆に質実な作品作りに妥協がない感じ。あともう一つは、原作への目のつけどころ、選ぶものがやっぱり面白いよなぁ。

今だからなのか変わらぬことか 【ややネタバレ】

さて、本作に戻りますが、『普通の人々』は初監督作品です。
当時としては、非常に地味なテーマとみられたんじゃないかしら。実際、本作の中盤までは、見る人によっては退屈するほど淡々とした、抑制のきいた演出です。だけど、心を強く強く揺さぶられる展開が待っている。いつ見ても、動悸が早まり、こちらが胸が苦しくなる。
内容的に、今日的なテーマを扱ってる部分もあってちょっと不謹慎かとも思いますが、冷静にみると「すごく映画的だな」と迫力を感じます。なかなか言葉にならない感情を、映像で、音楽で表現されてます。これはちょっと、見てもらわないと伝わらない文章で申しわけありませんが。。
ところで、実は近くのツタヤで、本作が特集コーナーにありました。「今だからこそ よくわかる…」とかいうポップ付きで。ブログ書こうとしている身では「あいたたた」とか思ったんですが、でも、その通りなんです(笑)。
またちょと小難しい話ですが、ナーバスな若者を軸に家族が崩壊していく様は、今日的な状況ではとてもリアルです。郊外に住む中産階級が、なにかの拍子にもろく、真実が露になると継続できないというのは、本作では精神面でのことですが、現実には経済面も加えて進行しています。
本作の不安定な主人公には、善良な精神科医、好きになってくれる女性、手をさしのべる友人、そして父親と、恵まれてます。しかし、それでもこんなに苦労している。いったい何に苦労するのか? 向き合う人に対して、本音を吐き出すことに。
普通に学校を卒業すること、就職すること、結婚すること、家庭を築くことに疑問を禁じえない、または難しさを感じる人に、本作のセラピー描写に触れていただければ、とも思います。僕は、ちょっと気楽になりましたよ。