20. ナンバー吾

集大成? or 新境地?

松本大洋作品関連でわりとメジャーどころといえば、窪塚洋介主演の映画『ピンポン』です。本作は、この原作漫画家の最新シリーズ、もっか連載中の作品です。
ピンポン ― 2枚組DTS特別版 (初回生産限定版) [DVD]
簡単な内容紹介。独創性あふれる異世界でのこと。エリート軍隊組織「虹組」から一人ドロップアウトしたナンバー吾(ファイブ)は、当然のように組織に追われています。彼の傍らには謎の女性が…。「虹組」は人間を超越したメンバーの集まりのよう。メンバーの一人、また一人と彼を追い戦いを挑むのですが…
実際は分かんないですが、松本大洋作品は好みが分かれる気がします。好きな人は熱烈に好きで、かなり読んでるのではないでしょうか。彼の作品の魅力は、絵柄、ストーリー、セリフ全てにわたって、強烈なオリジナリティにあふれていることです。そしていつも、なんだかちょっとイイ話。
漫画やアニメ、どれも同じようなパターンに少し飽きてる人は特にオススメです。
とはいえ、いきなり本作だと「線が崩れまくっとるな」とキツイかもしれないので、実は上記映画の原作『ピンポン』が(この人の漫画の中では)わりとわかりやすくてまとまってるので、それからがいいのかな。
ピンポン (1) (Big spirits comics special)
本作は、それまでの作風が大分かわった、というのが第一印象。でも読み進めていくうちに、(以下でとりあげる)前からのテーマをおり混ぜて、よりスケール感大きい作品に仕上がるのか、よくわかんなくて気になる作品です。

松本大洋作品あれこれ

僕が松本大洋作品の中で、初めて触れたのは『鉄コン筋クリート』でした。やはりユニークで、どこか懐かしい街「宝町」を舞台に、主役の悪童二人が、すんごい跳躍(ジャンプ)して暴れるアクション漫画です。それでいて、人生悟ったような年寄り、刑事やヤクザなど、実に存在感あるセリフを吐くキャラクターがたくさんでてきて、入り組んだお話を展開します。
鉄コン筋クリート (1) (Big spirits comics special)
それ以降、昔のも新しいのもわりと目を通したのですが、難解な要素が非常に多くて、いろんな分析はしんどいので、とらえやすい一貫したテーマに触れます。
そのテーマとは、(「シロ」と「クロ」というキャラに代表される)無垢な善属性のヒトと、世にスレタ悪属性のヒトのコントラストを軸に、二人の友情と対立、そうした交流がやがてシチュエーションから世界全体をゆり動かすという物語です。実はハッピーエンドが多いのですが、その道程は少し抽象的で、そして息苦しい。
GOGOモンスター
このテーマ、二人の性格的要素が多少変化するものの、多くの作品で繰り返しでてきます。『ピンポン』は、一番現実世界的な表現がなされてます。『GOGOモンスター』は、キャラの要素もシチュエーションも少しファンタスティックになりますが、同様のテーマがある。『花男』も、ユニークな父子家庭、その生活、そして野球という設定があるものの、やはりハッピーで素敵な読後感が最後にまってるんです。
花男 第1集 (ビッグコミックス)

オリジナリティの行き先は【ややネタバレ】

作品全般に他にはないオリジナリティがあるがゆえに、何か一つのテーマを追い続けるものなのかな、と勝手に思ったりもします。
本作はちょっと間があいた上での、気合が入った(笑)ような連載なので、上に書いたように「どうなるのかなぁ」と注目してます。連載途中で、オススメレビュー書くのが本作ほど迷うものもないのですが、な〜んかまた起こしてくれそうな気がするんですよねぇ。
たとえば『ピンポン』の、卓球台に座る小さい子供二人が、互いの交流によって健やかな人生を歩むにいたる感動や。『鉄コン筋クリート』の、二人の心が離れ、またつながることで、世界は闇深くもなればパラダイスともなるという、あの目まいがするような解放感が。
なにかキラキラした光がはじけそうな瞬間に、一緒に立ち会いましょうよ。というお誘いレビューでしょうか(汗)
サイボーグ009 (22) (秋田文庫)
ちなみに、本作は『サイボーグ009』の設定を持ってきてるみたい。ナンバーがかわいい。「王」「仁」「惨」…「岩」、これ、「1(ワン:中国語?)」「2」「3」・・・「6(rock!)」。ディテールやデザインがいつも洒落てて楽しませてくれるのが大好きなんです。