22. 拳闘暗黒伝セスタス

拳闘暗黒伝セスタス 9 (ジェッツコミックス)

拳闘暗黒伝セスタス 9 (ジェッツコミックス)

ローマ+ボクシング

古代ローマの映画や小説わりと好きで、加えてボクシングものも好きなので、両方を上手にミックスした本作は、血圧あがるほど大好きな漫画です。
内容紹介です。古代ローマ、ネロ皇帝即位前後から物語ははじまります。主人公は奴隷拳闘士のセスタス。黒髪・細身の美少年です。彼は奴隷拳闘士であるゆえに、コロッセオ円形闘技場)での凄惨な戦いに身を投じねばなりません。今日勝たなければ、明日の命もない身分。しかし、彼には斬新な理論、近代拳闘(ボクシング)の理論に基づき指導してくれる師匠がいます。師の教えに忠実なセスタス。当時のローマ情勢を再現した舞台で、師弟に加え、様々な登場人物が生み出すドラマが展開します。はたして、セスタスは明日の自由を勝ち取ることができるのか…
本作の特徴は、こうした好きな人は大好きな設定のうえに、絵柄にクセがなくておそらく誰が見ても魅力的なことです。ローマの町並みのビジュアル化もすごい出来だし、過酷な設定ながら、前向きで素直なキャラクターが多く、美形揃い。もちろん戦闘シーンも迫力に満ちています。
ちなみに、タイトル『拳闘暗黒伝』は誰のセンスなんだろう。いらんよなぁ。。
グラディエーター [DVD]
ところで、ローマもので新しめのヒットといえば、ラッセル・クロウがかっこいい『グラディエーター』(剣闘士)。こちらのコロッセオでの剣闘シーンと、本作の戦闘シーンを脳内ミックスさせると、非常に興奮しますよ。

ボクシングものアレコレ

ボクシングもののスタンダードといえば『はじめの一歩』でしょうか。構成が、試合、試合、合宿、また試合…という感じで、わりと単調なんですが、ギャグも面白くてずっと読み続けてしまいます。しばらく前までは、「必殺パンチ」を編み出す展開が多くて少年漫画ぽかったんですが、最近は、「基本のジャブ」の威力を増すとか、肉体的なリミットの中で勝つとか、渋い展開になってますね。
はじめの一歩(68) (講談社コミックス)
次に、本作と同じ週間アニマルで連載されている『ホーリーランド』。こちらは、街中のケンカ、ストリーファイトを扱っており、中でボクシング理論などにも随分ふれています。格闘技のウンチク多いんですが、しかしこちらの漫画は明快なテーマがあって、思春期の主人公が「自分の居場所を得る」というお話です。その手段がボクシング含めた暴力というわけで。独特の雰囲気をもった作品です。現代的な描写で、共感覚える人も多いのかも。
ホーリーランド (8) (Jets comics (052))
もう一つボクシングものでリンクすると、『満腹ボクサー徳川。』。人を食ったタイトル、出だしで「ボクサーがちゃんこ鍋を食ってる」というインパクト、大好きです(笑)。内容は、かつてウェルター級チャンピオンで「天才ボクサー」といわれた主人公・徳川が、何を思ったか身体をつくってヘビー級(!)にチャレンジするというもの。K-1戦も出てきます。あまりに無理だろうという設定の中、なかなか説得力もあり、見た中では、フィジカル(肉体)トレーニング含め一番科学的な漫画だと思います。最近の(公開)格闘技の空気感もよく伝わる。好きな人はぜひ。
満腹ボクサー徳川。 1 (BUNCH COMICS)

ローマものアレコレ

さて、『セスタス』に戻ります。こちらは、ローマに近代拳闘をとりいれるという、ありそうでなかった設定。実は、ボクシング理論の方は他作品でも見れるのですが、ローマ期にはこんな格闘やってたという描写のほうにむしろ「へェ」と思うことしばしばです。「右拳は矛、左拳は盾」という構えにぐっときたり。でも、それを近代的ワンツーコンビネーションでやっつけちゃうのに爽快感を覚えたり(どっちの味方だョ)。
しかし、「格闘もの」と呼ぶのはためらうほど、「ローマの話」もしっかり描かれているのが本作の特徴です。ローマの奴隷の話なので、自由を求める悲劇もあるし、少年皇帝ネロとネロママのイっちゃってるエピソードも充実してます。絵柄のせいで、そんなにドロドロ感はないんですが。。 それでは、ローマものに少しリンクします。
スパルタカス [DVD]
スパルタカス』は名匠スタンリー・キューブリックの大作映画。マイケル・ダグラスのお父ちゃん、カーク・ダグラスが主演です。「スパルタカスの乱」は世界史でもちらっと出てくる史実。「自由を求める奴隷の哀歌」という趣で、少しアメリカンな感じ。前半はすごくよかったんだけどな。カエサルがかっこいい。まぁ楽しめます。
スパルタカス [DVD]
最近リメイクあるんですね。こちらは未見。こんど見よう。
ベン・ハー 特別版 [DVD]
次は、ちょと強引ですが『ベン・ハー』も。一応こちらも円形競技場アリーナでの戦車競争シーンが有名ですが、キリスト教にテーマがうつる話ですね。主人公ベン・ハーの奴隷時代が参考でしょうか。作品自体はゴッツい名作です。

「奴隷」とか「自由」とか実は今も変わらぬテーマの気がしますが(ローマ市民ぐらい自由な人ってなかなかいないでしょう)、あまり難しいことは考えず、ワイン片手に鳥のカラアゲ食いながら、ローマ作品の娯楽性を楽しみ尽くすのも一興かと。
『セスタス』には、ネロが本当にイッちゃってしまうまで続いてほしくて、セスタスの一大大河ドラマを期待してしまいます。