28. ロード・オブ・ザ・リング 1

劇場前の 映画『指輪物語

新年あけまして、おめでとうございますm(_ _)m
前から気になっていた『ロード・オブ・ザ・リング -スペシャル・エクステンデッド・エディション』。ポイントは、劇場版と「コレクターズ・エディション」にはない30分の未公開映像、それとお値段とのバランスです(コレ高い)。でも大満足でした。
内容紹介をAmazonから抜粋します。

Amazon.co.jp
   J.R.R.トールキン原作の『指輪物語』の映画化。冥王サウロンが失ったのは、世界を滅ぼす邪悪な指輪。それを手にしたフロドが、指輪を破壊するために「滅びの亀裂」と呼ばれる火口へと旅立つ冒険物語。  〜(略


内容紹介
20世紀最高の文学として知られるJ.R.R.トールキン原作による「指輪物語」の完全映画化!
シリーズ3部作の記念すべき第一作「ロード・オブ・ザ・リング」を高画質・高音質で楽しむための、スペシャル・エクステンデッド・エディションDVD発売!
「コレクターズ・エディション」をはるかに超える、スペシャル・エクステンデッド・エディションのみ収録の映像特典が満載(6時間以上)!

ロード・オブ・ザ・リング ― コレクターズ・エディション [DVD]
有名作品なので一般的な内容はおいといて、約3時間半の本作バージョン「旅の仲間」の製作経緯をメイキングからご紹介します。まず、撮影されたラッシュ(素材映像)から、脚本に基づき「4時間半バージョン」が編集されたそう(これも見たい(笑))。それから、ピーター・ジャクソン監督の全面的な見直しにより、「指輪とフロド」に焦点をあてた「3時間半バージョン」ができました(←本作)。さらに、劇場公開のために泣く泣く「3時間バージョン」にしたそうです。だから、本作は劇場版前にフィックスしたバージョンとなる。
僕は原作ファンですが、劇場版の印象は「フロドばっかりやン」というのと、やはり「バタバタしてる」ということ。本作の特徴は、原作ファンには焦がれていたエピソードが入っており、一方で原作読んでない人でも非常にわかりやすくなっていることです。劇場版より原作に忠実で、その魅力的なエッセンスが描かれてます。
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ちなみに、3本パックになった「トリロジー」が「王の帰還」と同時期の2月に発売されるもよう。エムリンクmLinkでは2本目、3本目と順じレビューします。

原作 - 劇場映画 - 本作【ややネタバレ】

で、気になる追加の30分シーンですが、①「原作の長文をわかりやすくまとめた」というシーンと、②「ハズしたくな〜い原作エピソード」に大別されます。興がそがれないよう2点だけ。。
冒頭のプロローグ、そして、ビルボ・バギンズによる「ホビットを語る」の映像は①で、わかりやすさがありとてもいい感じです。前者は、古代の人間の王イシルドゥア(アラゴルンの先祖)と冥王サウロンとの戦いで指輪が流浪する経緯。これは劇場よりゆったりした感じ。後者は原作の最初で最大の難関ともいえる(笑)、ホビットの生態、習慣を軽くまとめたもの。シャイア(ホビット庄)の美しい自然の映像もみれてとても楽しいです。
ところで、原作『指輪物語』には前作があります、『ホビットの冒険』。ビルボ、ガンダルフ、および小人(ドワーフ)の物語。こちらはさすがに、子どもの頃一度読んだきりですが、本作にも出るドラゴン山の話とか石になったトロルの話、そして指輪が発見される話ですね。
ホビットの冒険 オリジナル版
さてもうひとつ、②のパターンでは森のエルフの都ロスロリアンで、女王ガラドリエルが旅の仲間の一人一人に贈り物を手渡すシーン。原作ファンは「ヤッター♪」です。僕が原作で好きなのは、ドワーフギムリガラドリエルにメロメロになったり、さらにエルフのレゴラスと友情を深めていくモチーフです。このへんの伏線となる描写ですね。
ケルツ
さてさて、では逆に原作を超えているのでは? と思う要素はなんでしょうか。まずは音楽。原作にはないもんね。同じケルト要素でつながりあるエンヤの歌も嬉しい(サビがエルフ語って気合入ってるな)。次に、CG。大規模戦争、クリーチャーは最高。監督はテクノロジーについて「80年代に映画化したら失敗してた」とのこと。
そして、俳優陣が本当によかった。レゴラス役のオーランド・ブルームは大出世。僕の一番は、アラゴルン役のヴィゴ・モーテンセン。本作では、アラゴルンとボロミアの葛藤も追加されており、エルフ寄りのアラゴルンが人間王としての自覚を持ち、絶望の中「自分のやるべき事」を見出す過程が明快になってます。制作スタッフ間でも、原作全部は無理だから人物描写に力点を置くというのがあったそう(メイキングより)。本作見て、このへんは原作よりもイイと思いました。

J. R. R.トールキンについて

本作のドキュメント映像で整理もされたし、一本目なので原作者について少々。
トールキンは英国オックスフォード大学の言語学者であったときに、『指輪物語』を13年かけて執筆しました。しかし、原作の特徴は、その深み、背景設定なのですが、それには次の経緯があります。彼は、第一次世界大戦に服役中(!)から、言語学的興味でエルフ語を作っていました。(おそらくケルト語やアイルランド地方言語を参考とした)オリジナル言語です。それから、オリジナルの詩歌、伝承作成と発展しますが、一方で、常々「イギリス固有の神話がない」ことを嘆いておりました。(「アーサー王」はフランス伝承を集めたもの)そこで、エルフも絡めてオリジナルの神話も作成します。これらもろもろが『ホビットの冒険』、『指輪物語』に結実する壮大な背景資料となります。これらは、彼の死後に息子の編纂で出版されました。
新版 シルマリルの物語
シルマリルの物語』(シルマリルリオン)。
えー・・・。二度は読まないだろうなと思う怪作です。まさに聖書を読んでる感じのもの。神の声をモチーフにした創世記は、「なるほど」と思いましたが。。もともと人に見せるつもりのなかった設定メモ(非常に緻密な虚構の伝承)を集めたものらしい。
ちなみに、アルウェン&アラゴルンの元祖、ルシアン(エルフ♀)&ベレン(人間♂)の悲恋物語もどっかにあったはず。とにかく、お話がいっぱい。
さて、トールキンの発言で気になることを少し。『指輪物語』は、今日的ファンタジーの源流であるゆえに、出版当初「寓意」とみられることが少なからずあったそう。例えば、「指輪=核エネルギー」とか「サウロンヒトラー」とか。で、彼はそれを完全に否定します。「寓意」とは、作者が現実を反映して意図的にメタファーを施すもの。『指輪物語』にそれはなく、ただし読者それぞれが持つ「解釈」にゆだねるものだと。


それぞれの「解釈」によって多くの人が、『指輪物語』のテーマに普遍性を感じるのだと思います。あくまで僕の解釈ですが、人の悪意を容易に引き出すアイテムは今も問題です。身近なとこで、ネット社会。ネットでのコミュニケーションは匿名性、誤解も含めて容易に人の悪意を増幅します。「指輪」のような力がある。
それでも自分のやる事を見出し、希望をもち続けることというのが、本作にも共通するメッセージなんだろうな。優等生的意見でナンですが、「励みとなる物語」の一本目はこんなとこで。

おまけ ”旅の仲間”たち(ドキュメンタリー)

気分をかえてお気楽に。
特典映像の一部で、役者達のインタビューがすっごく楽しいです。
撮影でニュージーランドに集まる際、ビリー・ボイドピピン)とオーランド・ブルームレゴラス)は、英国ヒースロー空港で待ち合わせて一緒にくるよう指示されたそう。お互い初顔合わせなのに、「あいつ、エルフ族っぽいな・・・」「あの小柄な人・・・ホビット?」とすぐ分かったそうです(笑)。
イライジャ・ウッド(フロド)はじめホビット4人組は、撮影前から共同生活してましたが、ある時期、イアン・マッケランガンダルフ)と同じトレーラになってしまいます。音楽の好みが違うことでやりとりあったとか・・・。
男ばかりの撮影現場なので、リヴ・タイラー(アルウェン)がたまにくるのを、み〜んなが楽しみにしていたりだとか。
特殊メイクのない役者さんみるだけでも嬉しいですよ(笑)。